「女教師研究所データベース」
(ぼ) 暴力・小学生
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暴力
→ (1) 乱暴な力。無法な力。(2) 物理的強制力を行使すること。特に、それにより身体などに苦痛を与えること。
小学生の対教師暴力が目立つという
(2006.09) 校内暴力:深刻な対教師暴力の実態浮き彫りに…現状探る
「こら、くそばばあ。あっち行け」。小学生が教師に暴言を吐いて殴る、ける。13日に発表された文部科学省の調査で、深刻な対教師暴力の実態が改めて浮き彫りになった。一人の児童の暴力が、クラスに荒れた雰囲気をつくり出し、学級崩壊の連鎖を生む。家庭に指導力はなく、暴力の対象になった教師は休職に追い込まれる。暴力でしか自分を表現できなくなった子どもたち。その現状を探った。【高山純二、吉永磨美】
給食の時間。小3の男児が壁や友達の机、テレビの台をガンガンとけって回る。周りの児童がはやしたて、男児の勢いは止まらない。教室の後ろでは、別の児童たちがパンをちぎって、ごみ箱に投げ入れる「遊び」に夢中だ。歩きながら給食を食べている児童もいる。
兵庫県内の小学校に勤務する40代の女性教諭は03年10月、学級崩壊したクラスの「応援」に入り、モノをけ散らす男児を廊下に引きずり出した。「何かをけらないと収まらないなら、私をけりなさい」。男児はためらわなかった。手加減もせず、女性教諭のおなかや足を20発以上もけり続ける。担任は別の児童を指導しており、暴行に気がつかない。女性教諭にとっては、児童から受けた初めての暴力を、隣のクラスの男性教諭が助けに来るまで耐え続けた。
3年生は2クラス。04年のクラス替えで、2クラスとも学級崩壊に陥り、さらに05年は下の学年にも「崩壊」が波及した。「指導を聞かない子どもと何度取っ組み合いをしてきたか。みんな(ほかの教師)もやられていた」。保護者会には、荒れている児童の保護者に限って欠席する。家庭での指導はもはや期待できなかった。今年度、女性教諭は耐え切れなくなって休職した。
「すれ違いざま、何もしていないのに『くそばばあ』と言われて……。今も小学生の登下校を見ると、心臓がどきどきする。このまま退職するかも……」
◇ ◇ ◇
教師の名前を呼び捨てにして、「死ね、死ね、死ね」と何度も繰り返す。埼玉県内の50代の女性教諭は、ほんの些細(ささい)な指導をしただけで、まるで幼児がじだんだを踏んでいるような小2男児の様子に戸惑った。教諭自身はまだ暴力を振るわれたことはない。しかし、暴言や児童間暴力は、実感として年々低年齢化が進んでいる。
中国地方の小5男児が授業妨害などの問題行動を繰り返して10日間の出席停止処分を受けるなど、「厳罰化」や「警察との連携強化」を模索する動きが進んでいる。だが、女性教諭は「今の教師は、『子どもと向き合う』こと以外の負担(学校内の事務作業など)が大きくなっている。もっと子どもと向き合う時間と余裕がほしい」と漏らした。
◇毅然と語りかけを
森嶋昭伸・国立教育政策研究所生徒指導研究センター総括研究官の話 少子化、情報化の影響で、子どもたちは感情をぶつけ合い、対処することが苦手になっている。まずは「ゼロトレランス」(寛容度ゼロ指導)のように、当たり前の常識やマナーを子どもや保護者に毅然(きぜん)と語りかけていくことが大切だ。さらに、警察・地域との連携も必要になるだろう。
◇成果主義でひずみ
葉養正明・東京学芸大教授の話 個性重視の半面、競争主義や成果主義が教育現場にも持ち込まれ、そのひずみが子どものストレスとなり、暴力や学級崩壊となって表れ、さらに校内暴力という形で問題が噴き出している。対症療法では解決しない。社会構造のレベルでの問題解決が求められている。
毎日新聞 2006年9月13日 20時15分 (最終更新時間 9月14日 2時20分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060914k0000m040066000c.html
(2006.09) 校内暴力:小学生、急増 女性教師に20発けり 崩壊連鎖、底なし
◇女性教師に20発けり、「くそばばあ」「死ね死ね」
「こら、くそばばあ。あっち行け」。小学生が教師に暴言を吐いて殴る、ける。13日に発表された文部科学省の調査で、深刻な対教師暴力の実態が改めて浮き彫りになった。一人の児童の暴力が、クラスに荒れた雰囲気をつくり出し、学級崩壊の連鎖を生む。家庭に指導力はなく、暴力の対象になった教師は休職に追い込まれる。暴力でしか自分を表現できなくなった子どもたち。その現状を探った。【高山純二、吉永磨美】
◇教諭「向き合う時間を」
給食の時間。小3の男児が壁や友達の机、テレビの台をガンガンとけって回る。周りの児童がはやしたて、男児の勢いは止まらない。教室の後ろでは、別の児童たちがパンをちぎって、ごみ箱に投げ入れる「遊び」に夢中だ。歩きながら給食を食べている児童もいる。
兵庫県内の小学校に勤務する40代の女性教諭は03年10月、学級崩壊したクラスの「応援」に入り、モノをけ散らす男児を廊下に引きずり出した。「何かをけらないと収まらないなら、私をけりなさい」。男児はためらわなかった。手加減もせず、女性教諭のおなかや足を20発以上もけり続ける。担任は別の児童を指導しており、暴行に気がつかない。女性教諭にとっては、児童から受けた初めての暴力を、隣のクラスの男性教諭が助けに来るまで耐え続けた。
3年生は2クラス。04年のクラス替えで、2クラスとも学級崩壊に陥り、さらに05年は下の学年にも「崩壊」が波及した。「指導を聞かない子どもと何度取っ組み合いをしてきたか。みんな(ほかの教師)もやられていた」。今年度、女性教諭は耐え切れなくなって休職した。
「すれ違いざま、何もしていないのに『くそばばあ』と言われて……。今も小学生の登下校を見ると、心臓がどきどきする。退職するかも……」
◇ ◇ ◇
教師を呼び捨てにして、「死ね、死ね、死ね」と何度も繰り返す。埼玉県内の50代の女性教諭は、ほんの些細(ささい)な指導をしただけで、幼児がじだんだを踏んでいるような小2男児の様子に戸惑った。教諭自身はまだ暴力を振るわれたことはない。しかし、暴言や児童間暴力は、実感として年々低年齢化が進んでいる。
中国地方の小5男児が授業妨害などの問題行動を繰り返して10日間の出席停止処分を受けるなど、「厳罰化」や「警察との連携強化」を模索する動きが進んでいる。だが、女性教諭は「今の教師は、『子どもと向き合う』こと以外の負担(学校内の事務作業など)が大きくなっている。もっと子どもと向き合う時間と余裕がほしい」と漏らした。
◇成果主義でひずみ−−葉養正明・東京学芸大教授の話
個性重視の半面、競争主義や成果主義が教育現場にも持ち込まれ、そのひずみが子どものストレスとなり、暴力や学級崩壊となって表れている。崩壊は力で抑えることで表面的には治まったようだが、次は校内暴力という形で問題が噴き出している。社会構造のレベルでの問題解決が求められている。
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◇小学生の暴力行為件数◇
都道府県 04年度 05年度 増減
北海道( 508) 7 7 0
青森 ( 508) 14 11 ▼ 3
岩手 ( 126) 1 11 10
宮城 ( 566) 18 19 1
秋田 ( 32) 7 5 ▼ 2
山形 ( 96) 0 0 0
福島 ( 67) 0 0 0
茨城 ( 912) 42 35 ▼ 7
栃木 ( 393) 122 48 ▼74
群馬 ( 220) 2 8 6
埼玉 ( 2075) 127 113 ▼14
千葉 ( 1020) 59 54 ▼ 5
東京 ( 764) 43 65 22
神奈川( 6088) 318 501 183
新潟 ( 419) 17 14 ▼ 3
富山 ( 179) 5 5 0
石川 ( 135) 4 10 6
福井 ( 50) 2 0 ▼ 2
山梨 ( 200) 19 4 ▼15
長野 ( 80) 2 2 0
岐阜 ( 541) 30 66 36
静岡 ( 883) 81 61 ▼20
愛知 ( 852) 21 70 49
三重 ( 978) 58 54 ▼ 4
滋賀 ( 428) 32 35 3
京都 ( 1026) 88 57 ▼31
大阪 ( 4574) 320 293 ▼27
兵庫 ( 1768) 173 131 ▼42
奈良 ( 922) 70 74 4
和歌山( 713) 8 7 ▼ 1
鳥取 ( 139) 13 4 ▼ 9
島根 ( 272) 47 41 ▼ 6
岡山 ( 657) 43 56 13
広島 ( 1065) 86 110 24
山口 ( 545) 38 24 ▼14
徳島 ( 42) 2 1 ▼ 1
香川 ( 639) 8 26 18
愛媛 ( 97) 19 7 ▼12
高知 ( 669) 28 22 ▼ 6
福岡 ( 1126) 31 41 10
佐賀 ( 64) 4 3 ▼ 1
長崎 ( 341) 5 5 0
熊本 ( 213) 2 1 ▼ 1
大分 ( 209) 7 5 ▼ 2
宮崎 ( 73) 0 1 1
鹿児島( 128) 0 0 0
沖縄 ( 616) 77 69 ▼ 8
計 (34018)2100 2176 76
※▼はマイナス、かっこ内は05年度の小中高における暴力行為の発生件数。校内外を含む
毎日新聞 2006年9月14日 東京朝刊
(2006.09) 9月15日付・読売社説(1)
[キレる小学生]「限界を超えれば“強制退席”も」
授業中に漫画を取り上げられた小学6年男児が、突然「キレて」女性教師の腹をけった。
けんかの仲裁に入った男性教師が小4男児から「何で止めるんだ」と怒鳴られ、体当たりされてツメで腕をひっかかれた。
“被害教師”たちの悲鳴が聞こえてくる。子どもから暴力を受けても、大人の力で押さえ込むわけにいかない。「体罰を振るえばクビ。どう対応すればいいのか……」。現場の悩みは深刻だ。
小学生の暴力が止まらない。昨年度、公立小学校児童の校内暴力は3年連続で増えて2018件、過去最悪だった。文部科学省が統計を取り始めた1997年度(1304件)に比べ5割増だ。
とりわけ教師に対する暴力は464件と、前年度の336件から38・1%も増えた。児童間の暴力(951件)や器物損壊(582件)も相変わらず多い。
文科省は「特定の児童が繰り返し暴力を振るう傾向が強い」と説明する。「教師の叱責(しっせき)を受け止められない、心の切り替えができない」。そんな児童が、勝手な行動を教師から注意されたり、制約されたりすると、突然キレてしまう。
早期に、学校全体で対応すべき問題だろう。だが、実際は「担任に任せきり」という小学校がほとんどだ。
保護者の理解、協力を得ることが何より大切だ。問題児童の親も含め、保護者が毎日交代で荒れた教室の授業参観を続けた結果、徐々に学級崩壊から立ち直り、正常化していった例もある。
だが、中には学校からの呼び出しに、「うちの子を悪者にするのか」などと、くってかかる親もいる。暴力は許されない、ということを、真っ先に子どもに諭すのは、親の務めではないだろうか。
学校側も、指導の限界を超えた児童には、毅然(きぜん)とした態度をとるべきだ。
昨年度、校内暴力で警察に補導された小学生は11人にとどまっている。
学校教育法に基づく「出席停止」処分を受けたのも、中国地方の小5男児だけだった。校内の備品を壊す。授業中に他の児童を外へ連れ出そうとする。転入してきて5か月、繰り返し指導したが改まらないため、厳しい措置をとった。
最も多いのは「訓告」(20人)だが、それを含めても何らかの処分を受けた児童は27人にすぎない。ほとんどは単なる叱責、注意で終わっている。
これで「反省」が望めるだろうか。特定の児童が暴力を繰り返すのも、この甘い対応に原因があるのではないか。
過度の暴力や、他の児童の学習権まで奪うようなケースなら、教室からの“強制退席”もやむを得ないだろう。
(2006年9月15日1時47分 読売新聞) YOMIURI ON LINE
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060914ig90.htm
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mary_kay2@infoseek.jp
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